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2011年6月15日 (水)

八木美知依ダブル・トリオ @ Moers Festival

 3月にロンドンでミーティングをした際、メールスのオーガナイザーのライナー・ミシャルケさんは「君は今年のメールスの隠し馬だ」と言っていましたが、彼はここまでの成功を予測していたのでしょうか、スタンディング・オベーションと鳴り止まないアンコールの要請に騒然としました。終演直後はあまり実感がわかず、目まぐるしくインタヴューやフォト・セッションが続き、その間に多くの出演者や関係者からハグやお祝いの言葉を頂きました。
 徐々に落ち着いてきたところに、この日駆けつけて下さったケルン文化会館の方が「この3日間のうち、八木さんが出演した最終日だけが晴れ、出る予定がなっかたオーネット・コールマンと同じ日に出演、ラッキーです。そしてこの反応。本当に私達も嬉しいです」と興奮された模様でお話を聞いているうち、胸にこみ上がるものに気付き「本当にありがとうございました。皆様の御陰です」と申し上げるのが精一杯でした。私の様な楽器だとヒョイと飛行機に乗って出かける事ができないので、いつも多くの方々の尽力の御陰で公演が成り立っています。感謝しても感謝しきれません。  
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 ここでこの3日を振り返ってみたいと思います。

6月10日(金)
 現地では「19年前に出演した八木美知依が自己のバンドで再びメールスに帰って来る。この事実は今後、若い音楽家たちに希望を与える事になるであろう」と期待を含めてPRされましたが、この言葉は少々プレッシャーになるものでした。言うまでもなく、以前出演した時よりも成長が見られなければ意味がなく、責任を感じていました。でもその期待に押しつぶされることがなかったのは、頻繁ではないものの、何とかこのバンドでライヴを続けてこられたのと、毎回なにかしら新しい試みに挑戦し、緊張感を保ってきたところによるもの。メンバーに対する信頼感と絶対の自信。さらに最近は別件で究極に忙しかったのでいろいろと考える間も無かった事によるものだと思います(笑)。
 フランクフルトからデュッセルドルフ行きの便に乗り換えるのに45分間あったので余裕だと思ったら、セキュリティ・チェックが混んでおり、ゲートも随分遠いので最後は駆け足でした。
 デュッセルドルフには私の箏スタンドが届いていませんでしたが、空港で待つ間フランクフルトで見つかり、今夜中に届けてもらえる事になりました。車で約30分、メールス市のホテルに到着、そこからまた10分程かかるメイン会場(巨大なサーカス・テント)に急ぎ、滑り込みでニルス・ペッター・モルヴェルのトリオを聴くことができました。馴染みのサウンドがダイレクトに鼓膜に届き、ほっとしました。ギターのスティアン・ヴェステルヒュスは前任のアイヴィン・オールセットとはまったく違うタイプですが、これまた素晴らしい才能の持ち主です。
 ホテルへ帰ると、ちょうど箏スタンドが届いたところでした。

6月11日(土)
 フェスティヴァルの出演者の中でも若手やサイドメンを中心に毎日繰り広げられる、題して"モーニング・セッションズ"にこの日だけ参加。
 朝11時スタートとあってヘッドライナーたちはあまり参加しない模様ですが、実は秘かに楽しみにしていました。英語が不十分な私にとって音楽を共有する方がずっと共演者の人なりがわかるからです。それに私は異常に早起きですし(笑)。
 夜、Encryptionと名付けられたロナルド・シャノン・ジャクソン(ds)を中心とするトリオを聴きにメイン・テントへ。家人の古くからの知り合いのメルヴィン・ギブス(b)によると、何とシャノンさんは昨夜、心臓発作で倒れ、入院中とのこと。それでも本人は病院を抜け出して演奏するというのですから、御年71歳の重鎮のジャズ魂とでもいうのでしょうか、本当に凄いですね。ヴァーノン・リード(g)も含む彼らの演奏はブルース感に溢れた素晴らしいもので、終演すると楽屋ではまるでホッとするため息が響くようでした。そしてシャノンさんは再び病院へ。
 静かな音楽は静かに聴き、大音量は体中で楽しむという観客の質も高いです。

6月12日(日)
 私は朝から糸の調整と転調の練習。他のメンバーは"モーニング・セッションズ"でウォーミング・アップ。家人によると「何で本番の日に朝っぱらから...」とブーブー言っていたメンバーの1人がもっとも凄まじい演奏をしたそうです(笑)。
 さて、到着した日に知ったのですが、一度は出演が中止になっていたオーネット・コールマンが急遽演奏する事になり、1セット増えるということでほぼ全出演時間が30分繰り上がりました。
 メイン会場は巨大テントで楽屋はその中の小テント。光栄にも私達の隣はオーネット・コールマン・カルテットのテントでした。
 舞台裏の3つのひな壇の上に2セットのドラムスと箏を置き、本番直前にひな壇ごとステージへ移動させるという段取り。恐ろしい事に通常のサウンド・チェックはなく、電源の確認のみです。「自分のモニターからは何が欲しい?」と尋ねられ、「え〜、っと」と迷っていると、「では全体を入れて箏の音を大きく出すのではどうですか?」と言われ「じゃぁ、それで」と。これがサウンド・チェックでした。でもそれだけで素晴らしい音作りをしている音響スタッフの腕前に感心しました。
 ステージ前にプレスのスペースがあり、そこに約20人のカメラマンがいて、まずは1曲目の「Song of the Steppes」を独奏している最中に撮りまくられ、シャッター音で自分の声や楽器の音が聴こえないほどでした(シャッター音って思ったよりうるさいんでビックリしました)。数千人の前で演奏するのは久しぶりですが、後方席にもちゃんと気持ちが届く様、遠くを見つめて歌いました。続いて2曲目の「コルトレーン・メドレー」("Seraphic Light"〜"Leo")で本田珠也(ds)、トッド・ニコルソン(b)、田中徳崇(ds)、須川崇志(b、cello)が登場。カメラマン勢がまずは先手を取ったノリさん(ステージに向かって左端)をバシャバシャと撮り、次に左端の珠也さんが派手な演奏をするとそちらへめがけて全員が走ってバシャバシャ。そしてトッドさんと崇志さんもバシャバシャ。
 演奏は「十六夜」、「River Man」と続き、そのままノリさんに5拍子を刻んでもらいながら「Rouge」になだれ込み。演奏時間の約束を何度もさせられたのでアンコールはさせてもらえませんでしたが、やらないとわかると客席からブーイングの様な声も聴かれました。
 演奏後、この日はMonolithicとして出演の上記スティアンさんと相棒のケネス・カプシュタさん(Motorpsychoのドラマー!)、ティア・フラーさん(ビヨンセのサックス!)ら初めてお会いする大勢の素晴らしい音楽家や関係者から祝福を受けました。
 インタヴューの中で、「今回の成功の鍵は?」という質問がありました。「メンバー全員が音楽をあきらめていないという事。どんな瞬間にも生きている音があり、感動があるので、客席の隅々に伝わったのではないでしょうか。気持ちが届く様にと願い込めて演奏しました」と答えました。とても優秀だけど優秀だけが売りではない、多感で知的でタフで心優しいメンバーと演奏できた事は私にとって幸せの絶頂経験でした。
 他に「プロとアマチュアの違いは何だと思うか?」、「あなたにとって箏とは何か?」、「聴衆とは何か?」など、いっぱいいっぱいいろいろな人から質問され、オーネットさんの演奏が始まる頃にはぐったりでした。でも、過去に演奏した事がある「Lonely Woman」などの曲が会場に流れると、御大の、まるで人が水を飲む様な自然な音の運びに目が覚めました。81歳だというのに音に驚くべき勢いがあり、伸びやかです。ところがブレスなんてしているのかわからないほど自然体で、体自体もあまり動きません。目に焼き付けました。たぶん生涯忘れないであろうひと時でした。
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コメント

おめでとう!おめでとう!!おめでとうっ!!!

投稿: marijazz | 2011年6月15日 (水) 23時28分

ありがとう!!ありがとう!!ありがとー!!ございます。

投稿: michiyo | 2011年6月15日 (水) 23時33分

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